食事客のみ使えるサービスエリア裏にひっそり作られたイスラム礼拝施設、「食事しなきゃ礼拝できないのか」とイスラム教徒から不満の声

開設２年余　利用低迷　諏訪湖ＳＡイスラム教礼拝スペースに「使いやすくして」の声
2021/05/12 11:02 長野県 社会 主要
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021051200068

岡谷市、諏訪市境の中央道下り線諏訪湖サービスエリア（ＳＡ）に設置された
イスラム教徒の礼拝スペース。
２０１９年３月の開設から２年余が経過し、「いつでも、誰でも使えるようにして」と
工夫を求める声が当事者たちから出ている。
外国人観光客増加を見込んで設けられたが、利用はレストランで食事した人に限定しているためだ。

礼拝スペースは、同ＳＡを管理する中日本エクシス（名古屋市）がレストラン裏にあった従業員休憩所を
改装して設けた。礼拝マットや手洗い場、男女を区切るカーテンの他、
天井には「キブラ」（聖地メッカの方角を示すサイン）も付けた。

同社は、同様の施設を足柄ＳＡ（静岡県御殿場市）と浜名湖ＳＡ（同県浜松市）にも開設。
どちらも営業時間内に予約なしで自由に利用できるが、
諏訪湖ＳＡは建物の裏で従業員の目が行き届かないことから普段は施錠され、
利用はレストランで食事をした場合に限定。
ＳＡ側に声を掛けないと使えない。

これについて、マレーシア出身のアニス・ファーハナ・ザイヌッディンさん（２５）＝茅野市＝は
「食事しない場合は礼拝できないってことなのかな」と首をかしげる。
同社の担当者は「礼拝スペースはレストランの協力を得ており、売り上げにも貢献してほしいため」と説明する。

礼拝スペースは、松本や北陸方面に向かう外国人観光客の増加を見込んで利用が始まった。
同社によると、１９年度は週３、４人の利用があったが、
新型コロナ拡大に伴う外国人観光客減少で２０年４月以降は利用者はほぼゼロ。
運用方法は利用者の様子を見ながら修正を重ねていく計画だったが、
外国人観光客の減少で担当者は「模索段階から抜け出せていない」とも話す。

県内でイスラム教徒向けの観光に携わる信州イスラーム世界勉強会事務局の渡辺聡さん（６１）は
「礼拝スペースを設けるだけではいけない」と話す。
コロナ収束後も見据えた受け入れ態勢充実のために、食事の提供やおみやげ品の販売など、
さまざまな面からイスラム教徒に喜んでもらえる態勢づくりをする必要がある―としている。