【感動】｢俺がダメになったのはお前らのせいだ！｣と父親を轢殺しようとした引きこもり(30)に猶予判決　父親が｢責任は我々にある｣と認める

父を車ではねたとして殺人未遂の罪に問われた被告は、自室にひきこもる生活を続けていた。

公判では、父は自らに責任があり、息子の自立を諦めて家から出さないようにしていたと、息子をかばう姿が浮かび上がった。親子の内向きな葛藤に事件後、変化が生じた。

検察側の冒頭陳述などによると、被告は中学生のころ不登校気味になり、高校に進学したが中退。自室にひきこもりがちになった。

父は「私たち夫婦に責任がある」と自らを責める。被告は「おれが失敗したのは父さんと母さんのせいだ」と言い、両親に攻撃的な態度を取るようになったという。

フリースクールに入学したこともあるがうまくいかず、アルバイトは長続きしなかった。

被告は21歳のとき恐怖症性不安障害と診断され、また自室にこもるようになった。思い通りにならないことがあれば物を投げた。

母は「怒ったら何をするか分からない」と怖がり、父は「自立を諦め、家から出さなかった」。
被告は口論になると「父さんたちのせいで駄目になったのに」と口にした。

事件が起きた昨年6月、「仕事を探してる」と話し掛けた被告に、父は「仕事せんで家におれ」と返したことから口論になった。被告は父を車ではね、「（父が）恐ろしかった」と供述した。

だが、事件を機に父子の心境に変化があった。
父は自身の発言が事件の発端になり「私自身も悪かった」と思い、「（息子を）許してほしい」と願った。
被告は「父との関係を何とかやり直していきたい」と供述。弁護人から両親への思いを問われ「本当に、申し訳なかったのひと言です」とつぶやいた。

愛知教育大の川北稔准教授（社会学）によると、ひきこもり状態にある子どもの親は負い目や責任感から周囲に相談しづらくなるという。

だが「第三者の介入で冷静になることも多い」として、専門機関など周囲に情報を提供してほしいと訴える。

被告は逮捕後、県地域生活定着支援センターの職員と面会した。同センターは釈放後の被告に医療と福祉のさまざまな支援を講じると約束している。

同センターの大坪幸太郎所長代行は「両親も精いっぱいだった。胸が締め付けられる」とし、
「被告は生きづらさを抱えていた。事件を機にセンターが介入することで、少しでも支援者が増えるようにしたい」と語った。