ナイキの社長「実は昔人を殺したことがある」

このような奨学金は、ホワイトの家族に人生の可能性を与え、ホワイトが「無駄死にしたわけではないこと」の証になると、ホワイトの娘アーリーンは言う。また、ミラーの言葉には行動が伴わなければならないとも彼女は指摘し、「ことあるごとに私は彼を呼びつけ、父のためのこの遺産がきちんと実を結ぶようにするつもりです」と述べる。

詳細はまだ決まっていないものの、「ホワイトの名前が生きること、そして私たちのコミュニティーの出身者に役立つことをすることで合意できたと思っています」とミラーは言う。

ホワイトの息子のアダムスも、ミラーに彼のことを赦すと12月のミーティングでミラーに言ったそうだ。

そしてアダムスが話したのは、家族にとって「21」という数字が大切だということだ。それは自分と父親を含む家族数名が21日生まれで、それを記念してジャージの背番号も21にしているのだという。

また父親殺害の詳細を知ったのがごく最近で、そのショックと悲しみ、つらさについても語った。さらに、これまでずっと父親の生き写しだと言われてきたことにも触れた。

娘のアーリーンも、ミラー宛に書いた手紙をミラーの前で読みあげた。父に会えなかったこと、父の笑顔や声を知ることができなかったこと、結婚式で父とバージンロードを歩けなかったこと、孫に会うのを喜ぶ父を見られなかったことも「フェアではない」と彼女は訴えた。

ホワイトと結婚するつもりだったアーリーンの母親は、幼い子供2人を残され、経済的困窮を余儀なくされた。

父親がどうやって死んだのか、つらい詳細を今回はじめて知ったため、「まるで人生で2度も父を亡くしたかのようです」と、アーリーンはミラーに言った。　　

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殺人犯は赦されるのか

ミラーは、ホワイトとわずか数ブロックしか離れていないところに当時住んでいた事実に言及し、こう言った。「正直、ホワイトについて、いろいろ聞き、考えるほど、知り合っていれば好きになれていた気がする」

なお、ミラーの本にホワイトの名前が記されていなかったため、「父はまるで誰でもないかのように感じた」とアーリーンは本紙に述べた。また、本の出版前にも、「スポーツ・イラストレイテッド」誌の記事公開前にも一家に連絡がなかったため、「私たちの存在は、彼にとって二の次だったのです」と述べる。

一方、ミラーは以前からホワイトの遺族と連絡を取りたいと考え、見つけるために私立探偵も雇ったと主張する。「彼らと連絡を取るのは不安で、心配でした」と彼は言う。

本を書いたことで、少なくともホワイトの遺族に会えてよかったとミラーは言う。もう何年も自分を赦そうとしてきたが、一家と会い、コミュニティーのためになることをしたことで、神が赦してくれたと信じていると話す。「そしていま、ホワイトの家族にも赦してもらえるかもしれない。自分にとってはある意味、輪が完結することになります」と語る。

ミラーは、本書を通じて元受刑者に対する人々の見方を変え、服役中の者や犯罪予備軍にポジティブな影響を与えられることを願っているという。　

その一方で、アーリーンは、まだ今回の出来事から立ち直ろうとしているところで、ミラーを「100%赦す」という気持ちにはなれないと言う。だがそうなりたいと思っていると述べ、こう話す。「つらい気持ちや憎しみを抱えて生きることはできません。そのようなことは自分にとっても自分の魂にとっても良くありませんから」

将来本が改訂された場合、「エドワード・デヴィッド・ホワイト」の名前をそこに含めるかについては、ホワイトの家族とミラーはまだ話せていなが、話し合う用意はあるとミラーはいう。

ホワイトの家族が言うのは、最終的にはミラーを敵とも友人とも考えておらず、ただ彼は、罪を赦された者で、自分自身を赦す必要があるということだ。

アーリーンはこう話す。

「何度も繰り返し謝ることはできます。でも最終的には、自分が納得しなくてはなりません。自分が人を殺めた事実と折り合いをつけなくてはいけないのです」