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https://mainichi.jp/premier/health/articles/20191105/med/00m/100/008000c

「12のステップ」で回復

東京都内で
「おれは、おかしいのか」。ギャンブル依存症回復支援に取り組む「ワンネスグループ」共同代表の三宅隆之さん（45）は13年前、自殺やアルコール依存症などさまざまな相談機関に電話した。そして32歳の夏、横浜のギャンブル依存症支援施設に入所した。
施設のプログラムは、複数のギャンブル依存症患者が車座になり、自身のギャンブル体験を打ち明け合う「グループミーティング」を繰り返し、内省を深めていく。そこで話されたことは外に持ち出さないという約束があるため、これまで口外できなかった後ろめたさやつらかった出来事などを本音で吐き出すことができる。自分と同じ苦しみを持つ人たちから共感を得る中で、気持ちを軽くしたり、自分を客観的に見つめ反省をしたりする。そしてミーティングの最後には、ギャンブル依存症患者の自助グループ「ギャンブラーズ・アノニマス（匿名のギャンブラーたち）」の12のステップという文言をみんなで読み上げた。
三宅さんは、なぜギャンブルで借金をかかえて盗みをするのか、自分でも理解できなかった。「だめな人間なんだ。このままずっと、この状態が続いていくんだ」とあきらめていた。しかし、ミーティングで、ほかの依存症患者に「やめられなかったのは依存症という病気だから」と話す人がいた。
「病気だったのか」
「ぼくは病気だったのか。病気ならば治せるかもしれない」。自分と同じことに苦しんできた依存症の人々がミーティングで打ち明け、やめ続けられているのも見た。「僕もやめ続けることができる」という希望が持てた。入所期間は1年3カ月。33歳で、横浜の司法書士事務所でアルバイトを始めた。家賃や税金を滞納しない「普通の生活」を送ることができるようになった。
しかし、後悔の念はつきることがなかった。「最初の放送局の時に、依存症と気がついてギャンブルをやめていれば、もっと違う人生だった」という思いがわき、自殺したい気持ちになった。毎朝、「死にたい。死にたい」とつぶやき、その苦しさからは逃れられなかった。
そんな時、「12のステップを実行したら回復できた」ということを聞いた。アルコール依存症から回復できたという男性に、「教えてほしい」とすがりつき、1対1で実践していくことになった。
ステップ1ギャンブルをコントロールできず、仕事や学業、社会生活ができなくなった自分の状態を受け入れる▽ステップ2、3自分だけではやめられない。自分以外の力を信用して、その力に委ねる決心をする▽ステップ4自分が抱えてきたギャンブルの引き金になる恨み、恐れ、罪悪感、後悔に関する四つの感情とその出来事のリストを作る▽ステップ5～7そのリストを見つめると、自分の欠点や改善のポイントが見えてくるので書き出す。そして、その欠点を取り除いていこうと意欲を持つ▽ステップ8出来事のリストに沿って自分が迷惑をかけた人のリストを作る▽ステップ9リストに掲載した人にできる限り、直接会って謝罪する――など12段階に分かれ、1段階ずつ実践していった。欧米では依存症の治療法として当事者グループで一般的に行われているというが、日本ではそれほど知られていなかった。
両親への謝罪。そして…
ある時、ステップ9の「迷惑をかけた人に直接会って謝罪する」段階に来た。「両親はきっと怒っていて許してくれないだろう」と思い、うまくいくのか不安だった。そこで両親に「この日時に電話するから出てください」という手紙を送った。
その日時となり、しばらく連絡を断っていた母に電話した。母は想像していたよりも落ち着いていた。「会ってほしい」と言うと、母はすぐに「分かった」と言ったが、その声は震えていた。電話を切ると、ぼろぼろ涙が出た。「ありがたい」という思いでいっぱいになった。
東京で両親と会い、「身勝手で申し訳なかった」と謝ると、母は「ヒステリックな状態で育ててたからなあ」とぽろりと言った。三宅さんは、この母の言葉で、両親と心の底から話せたように感じた。そして、この12のステップをしっかりやれば、回復できるという確信が持てた。
東京の放送局には、手紙を書いて施設入所中は返済を猶予してもらっていた。示談では月4万円ずつ返済する約束だったので「今の収入では月1万円ずつしか払えません」と正直に言うと警察に突き出されるのではないかと怖かった。
放送局の近くの喫茶店で元上司と会った。アルバイトしながら回復プログラムを続けていることを伝え、返済について正直に話すと、「続けていくことが大切じゃないか。近況も一緒に封筒に入れて聞かせてよ」と言ってくれた。温かい言葉だった。三宅さんは、正直な気持ちを伝えることが大切なことだとも実感した。

この根本を変えないと台解析してもどうにもならん