自衛隊って軍隊なの？　💂　自衛隊員は軍人？

https://www.yomiuri.co.jp/science/20221109-OYT1T50171/
自衛隊機でしか行けない「南鳥島」でみた気候変動…単独行動厳禁の島で見た光景

日本最東端の「南鳥島」は、東京都心から約１９００キロ離れた絶海の孤島だ。実はこの島は世界的にも貴重な気象観測の拠点でもある。気象庁が３０年近くにわたってコツコツと収集したデータは、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第２７回締約国会議（ＣＯＰ２７）の国際交渉にも活用されている。
南鳥島は、本土から航空機で片道最短４時間かかる太平洋上に浮かぶ。サンゴ礁が隆起してできた一辺約２キロの三角形の小島だ。

島には公共交通機関や宿泊施設、コンビニなどはなく、海上自衛隊や気象庁などの関連施設だけが立つ。受け入れ態勢がないことから、民間人は上陸すらできない。ここに暮らすのは、海上自衛隊の隊員や気象庁、国土交通省の職員ら計２５人ほどしかいない。
島の北東部に立つ気象庁の「南鳥島気象観測所」は１９９３年２月、日本で岩手県大船渡市の観測所に続いて２番目となるＣＯ２観測を始めた。その後、他の温室効果ガスのメタンや代替フロンの濃度も測定するようになった。
人間の社会活動の影響が少ない
来年１月に再び南鳥島に向かう藤原さん（１０月２０日、東京都港区の気象庁で）＝沼田良宗撮影
「人間の社会活動の影響が少なく、質の良いデータが取れます。世界的にも貴重な観測所です」。６月まで島で観測業務に従事していた気象庁環境・海洋気象課の藤原 昴すばる さん（３０）はそう語る。
気象庁は２～３か月交代で職員１０人程度を派遣し、２４時間３６５日の観測態勢を維持している。島には滑走路があり、東京との行き来には自衛隊機を使う。
休日はヤシの実でクッキー作り
絶海の孤島である南鳥島で、職員たちはどんな生活を送っているのか。
冬場でも最低気温が２０度近くに上り、島内にはヤシの木が自生する。島での休みの日は、菓子作りに精を出すという藤原さんは「乾燥させたヤシの実をクッキーに入れると絶品になります」と笑う。滑走路では毎月、ソフトボール大会が開かれ、自衛隊と気象庁が親交を深めるという。
南鳥島に整備されている滑走路（国土交通省の資料より）
ただ、離島ゆえの苦労もある。島には病院もなければ、医師もいない。「軽傷が重傷に、重傷は致命傷になる」。島に着任する職員は、この言葉を肝に銘じる。岩場で滑ってけがをしないよう、単独行動をしないことは鉄則だ。
藤原さんは来年１月、６度目の南鳥島への派遣に臨む。「これまでの温暖化対策を検証するために、大気の現状を知ることは非常に重要です。しっかり準備して観測に臨むつもりです」と力を込める。
数奇な運命をたどった南鳥島の気象観測
南鳥島では、ＣＯ２濃度の観測を始める以前から、長年、気象観測が行われてきた。
南鳥島気象観測所の外観（小笠原村提供）
南鳥島で気象観測が始まったのは１９３５年１０月。日本海軍水路部気象班によって行われてきた。しかし、戦後の４５年９月に米国極東軍が進駐し、米軍の占領軍政下となる。４７年には台風や高潮により全ての米軍が引き上げ、無人島となることもあった。
しかし、その後、日本政府による観測が徐々に再開する。小笠原諸島の日本返還に伴い、気象庁が６８年６月に南鳥島気象観測所を設置し、米国気象局から気象観測業務を引き継いだ。
国内唯一の「全球観測所」
南鳥島でのＣＯ２観測では、赤外線を吸収するＣＯ２の性質を利用し、室外から取り込んだ空気に赤外線を照射し、赤外線の弱まり方を調べることでＣＯ２の濃度を計測している。
業務の大半は大気の採取や分析に使う機器の点検だ。不具合があれば、深夜でも限られた人員で復旧にあたる。
南鳥島で使う機器の前に立つ気象庁の藤原さん（１０月、東京都港区の気象庁で）＝沼田良宗撮影
２００６年９月の台風１２号では、庁舎が機器もろとも高潮で浸水し、観測が約２か月間できなくなった。３０年間で観測が途絶えたのは、この時だけだった。
国連の専門機関である世界気象機関（ＷＭＯ）が取り組む全球大気監視計画において、南鳥島は重要な拠点だ。島の周囲は何十年先も大規模な開発が行われず、地球規模の環境を観測するのに適していると認められ、国内で唯一の「全球観測所」となった。全球観測所は、ハワイや南極、スイスのアルプスなど、世界でもわずか３１か所しかない。
観測史上最高を更新
南鳥島で気象庁が主に観測しているのがＣＯ２だ。太陽からの熱を地球に封じ込める性質があり、気温上昇を引き起こす。ＣＯＰ２７を前に、ＷＭＯは１０月下旬、２０２１年の世界のＣＯ２平均濃度が４１５・７ppmに達し、観測史上最高を更新したと発表した。産業革命前の水準（２７８・３ppm）の１・５倍に達している。