ナチスドイツの秘密兵器「V号戦車パンター」を自宅に隠し持っていたナチス愛好家のおじいさん、有罪に

世にはさまざまな収集家がいるが、ドイツには兵器収集を趣味とし、戦車まで保有してしまった資産家の男性がいた。非常に数多くの武器を自宅の地下室に保有していたこの老人は、2015年の発覚以来、メディアを騒がせてきたが、ついに有罪となった。
巨大戦車を保有していた資産家の男性

8月3日、第二次世界大戦時代の戦車や対空砲など複数の軍装品を自宅に所持していた北ドイツの84歳の男性に有罪判決が下されたと、独紙「南ドイツ新聞」などが報じた。

被告人の男性は元金融ブローカーの資産家で、兵器に加えてナチスやその親衛隊の記念品も保有し、自宅の地下室を兵器博物館のようにしていたのだった。武器収集家として登録し、保有登録されていた武器も少なくなかった。

しかし、2015年、ナチス時代の美術品の闇市場の調査をしていた際に、かつてアドルフ・ヒトラーの首相官邸の前にあったブロンズの馬の像をこの男性が保持しているという疑いが出て、男性のコレクションの捜索が行われた。

その結果、未登録だった数々の武器が見つかり、魚雷、迫撃砲、機関銃などや1000発以上の弾薬が押収された。そして、なんと1944年製の重さ約45トンのドイツ国防軍戦車「パンサー」の保有も見つかり、その後ドイツ連邦軍の特殊部隊によって、戦車は9時間かけて撤去された。

この事件は、ドイツのメディアを賑わせたが、それから6年かけて事件の処理がなされた結果、武器の不法所持の罪で、男性に14ヵ月の執行猶予付きの実刑判決と25万ユーロ（30万ドル）の罰金支払いが命じられた。

さらに、戦車と高射砲は、今後2年以内に博物館などに売却または寄贈することが義務付けられた。

あくまで「収集目的」の軍事品

一方、独誌「シュピーゲル」によると、男性は武器のコレクションを秘密にはしておらず、大雪の降った冬には戦車を除雪機として使用していたという。保有している戦車のことも「誇りにしていた」と、被告人を知る別の武器コレクターの男性も証言している。

男性の弁護人も、あくまで軍事品の保有は「収集目的」で、実際に使用することはなく、兵器が「無許可の第三者がアクセスできないよう」敷地内に保管されていたと強調する。

また、集められたコレクションは、魚雷や迫撃砲、戦車はもはや軍事使用には適しておらず、高射砲だけが現在軍事利用できると専門家に判断された。武器を使った事件を起こしたこともないことから、裁判所も、男性があくまで収集のために数多くの軍事品を集めていたことを認めた。

そのため、裁判所はより重大な犯罪性を訴えていた検察の主張を退け、当初の予想よりは軽い判決となった。

結局、有罪の根拠となったのは、機関銃の銃身とカートリッジ2本の所持にとどまった。罰金のうち、国庫に収める5万ユーロは、戦車や兵器の撤去にかかった費用だそうだ。

謎の多い事件

とはいえ、独誌「シュピーゲル」によると、これほど広範なコレクションがどう集められ、どう用いられていたのかも、明らかになっておらず、謎が残る。

裁判に直接関係のない「個人的なこと」ではあるが、コレクションの中にはアドルフ・ヒトラーの胸像、ナチスの制服や武器を身につけた100体以上のマネキン、ナチスのシンボルが入ったテーブルなどもあった。これらは一般公開していたら有罪になりうるが、あくまで自宅の地下室に置かれていたので起訴されることもない。

しかし、それほどナチス時代の軍事品に熱中していた理由というのにも疑問がわく。それらをどう使っていたのか、人に見せていたのかも気になるところだ。

https://courrier.jp/news/archives/256900/

美しい写真が撮れそう