イスラエル、内戦へ 極右ユダヤ教徒とアラブ人が衝突、軍が治安出動する事態に

ガザとイスラエル国内「二つの戦闘」同時に　首相、困難なかじ取り

イスラエル軍と、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘を受け、イスラエル国内でも極右ユダヤ教徒とアラブ人の衝突が激化している。
ハマスによるロケット弾が商都テルアビブ周辺に着弾し、死傷者が出たことがきっかけだ。「二つの戦闘」が同時進行する中、ネタニヤフ首相は困難なかじ取りを迫られている。

　イスラエルのメディアによると、ユダヤ人とアラブ人が共に住む中部ロッドでは双方の衝突が続き、レビボ市長は11日に「内戦だ」と表現。
13日朝にはシナゴーグ（ユダヤ教会堂）が何者かに放火され、ユダヤ人救急隊員が狙撃されて負傷した。また、北部ウンムルファヒムでは、車でアラブ人地区に迷い込んだユダヤ人家族が暴行される事件もあった。

　インターネット上では、極右ユダヤ教徒による「反アラブ」デモを呼びかける動きも出始めている。「アラブ人を見たら刺せ。ユダヤ人の尊厳を取り戻そう」との書き込みも拡散。
実際、テルアビブでは極右のユダヤ教徒が13日に「アラブ人に死を」と叫びながら行進し、警察が閃光（せんこう）弾を放って中断させた。

　イスラエルはユダヤ人約7割、アラブ人約2割で構成されるが、国内で大規模な民族対立が続くのは最近では異例。
ネタニヤフ首相はユダヤ人とアラブ人が共に住む地域に軍を派遣し、裁判を必要としない「行政拘禁」開始も検討している。ガンツ国防相は、国内の民族対立は「ハマスのロケット弾より危険だ」と述べた。
イスラエルがハマスへの集中攻撃を急ぐ背景には、ハマスを早期に弱体化させ、国内の治安悪化阻止に力を注ぎたい思惑も指摘されている。【ガザ市（パレスチナ自治区ガザ地区）三木幸治】

https://mainichi.jp/articles/20210514/k00/00m/030/161000c